行雲流水 〜お気に召すまま〜

好きなことを好きなように好きなときに書くブログです。

読書記録:2021年5月

貴田庄『原節子 わたしを語る』(朝日新聞出版)
コンチャ・ロペス=ナルバエス『太陽と月の大地』(福音館書店
立道和子『年金・月21万円の海外暮らし1』(文藝春秋
浅井信雄『民族世界地図』(新潮社)
パオラ・ペレッティ『桜の木の見える場所』(小学館
宮部みゆきパーフェクト・ブルー』(東京創元社
リュボーフィ・フョードロヴナ・ヴォロンコ『町からきた少女』(岩崎書店
千々岩英彰『心を動かす色彩マジック』(青春出版社
リリ・タール『ミムス ――宮廷道化師』(小峰書店
巖谷國士『ヨーロッパ 夢の町を歩く』(中央公論新社
児玉光雄『最高の自分を引き出すイチロー思考』(三笠書房
ウィーダ『フランダースの犬』(新潮社)
ジル・ルイス『白いイルカの浜辺』(評論社)
篠原淳美『こころを救う犬たち』(幻冬舎
ヴァルトラウト・レーヴィン『マレクとマリア』(さ・え・ら書房
山田昭男『稼ぎたければ、働くな。』(サンマーク出版
日比野宏『アジア亜細亜 無限回廊』(講談社
シンシア・ロード『星を見あげたふたりの夏』(あかね書房
オスマン・サンコン『大地の教え』(講談社
J.K.ローリング『吟遊詩人ビードルの物語』(静山社)
造事務所『日本人が知らないヨーロッパ46ヵ国の国民性』(PHP研究所
アストリッド・リンドグレーン『サクランボたちの幸せの丘』(徳間書店
アンリ・トロワイヤ『ユーリーとソーニャ』(福音館書店

 

計23冊。

 

5月は休日が多かったこともあり、だいぶいい調子で読み進められました。

 

先日も書いた通り、5月はブログを24記事も書くことができました!そのうち「読書感想」の記事は9本です。
読書感想を今の形式で書くようになってから2ヶ月経ちましたが、これ1本書くのに毎回時間がかかっていて、実はけっこうしんどいことがわかりました(笑)

 

とにかく記事が長いですよね・・・。
そんな記事でも、毎回楽しみにしているとおっしゃってくださる方々もいて、そのことが何よりの励みになっております。本当にありがとうございます。

 

ちょうど先週の某ドラマで国語の要約力についての話があり、なるほどなぁと思うことがたくさんありました。
ただ内容をダラダラと書くだけではダメなんですね・・・今月からは私も「要約力」を意識してみようと思います。

 

そんなわけで、早速読んだ本の中から感想を。
しかし、さっき「要約力を意識する」と書いたばかりなのに書いてるうちにどんどん気持ちがヒートアップしてしまいました(苦笑)なので、今回は一冊だけにとどめておきます。

 

篠原淳美『こころを救う犬たち』(幻冬舎

著者は犬の保護活動に携わっており、自宅で保護犬の一時預かりや飼い主探しも行っています。
本書は人と犬とのかかわりについて、「人の心を救った犬たち」「犬から教わった大切なこと」「かけがえのない絆を知って」の3章に分けて述べられています。

 

かなしい時、辛い時、人生に絶望した時、一匹の犬が生きる希望を与えてくれた――そんなエピソードは数え切れないほど存在します。

 

心の病気を患い一人で外出できなかったのに、犬とともに自分の意志で散歩に出るようになった夫。
老人ホームに入所してきて以来、一度も笑ったところを見せたことがなかったのに、犬たちとの触れ合いによって初めて大声で笑った老紳士。

 

これらは、本書の中で実際に語られている「犬に救われた」エピソードです。

 

この本に登場する犬たちは、みんな何かしらの事情を抱えています。
虐待され、傷つけられ、人間を信じることができなくなった犬。激しい暴力を振るわれ、人間の姿を見ただけで怯えるようになった犬。心の病を患った犬。
・・・多くは、このように人間によって苦しめられてきた子たちです。

 

購入したときの大きさよりも大きく育つとは思わなかったと言っては捨て、うんちをするとは思わなかったと言っては捨てる。子犬を購入したすぐ後に二週間ほど旅行に行き、帰宅したら子犬が死んでいて、「どうしてくれるんだ?」と購入先に怒鳴りこんだという人もいる。子犬は旅行中ご飯をもらえず、餓死したのだ。またワクチンのすんでいない子犬を外に連れ出し、伝染病に感染させ死なせてしまう。一日中、家族中でさわりまくり、疲れ果てた子犬が病気になり、それもまたクレームとして購入先に電話をかける――。
 「まさか!」とお思いになる方もあるだろうが、この「まさか」と叫びたくなるような常識を逸脱した事実は、実際にあったことばかりである。

篠原淳美『こころを救う犬たち』(幻冬舎)、44~45ページ

 

「犬を飼う」ということをただのアクセサリーとしか思っていないような飼い主の話もありました。
あまりにも愚かで、あまりにも身勝手な理由で簡単に犬を手放す人間たち・・・とにかく腹が立って腹が立って仕方ありませんでした。

 

そんなボロボロになった犬たちと、全力で愛情を注いで向き合おうとする人たちについても描かれています。

 

飼い主からの8年にもおよぶ凄絶な暴力と虐待を経験したポメラニアン。保護されてからも心の傷は癒えず、人間に怯え続けていました。
この子を引き取りたいと名乗り出てくれたご家族のエピソードは、涙なしには読むことができませんでした。

 

「触れられても、痛いこと、怖いことは何も起きない、そう教えてあげる」
 そう言って、いきなりプー助を抱き上げたのである。
 ――中略――
 激しい抵抗はしたものの、抱き上げられてしまったプー助は、すべてをあきらめたようにその抵抗をやめた。あの男性のところにいたときは、抱き上げられた次に起こるのは、壁や床に叩きつけられるか、二階の窓からほうり投げられるかのいずれかであったのだ。想像を絶する恐怖心は、激しい全身のふるえとなって表れている。
「プー助、怖がらないで。もう、誰もプー助をいじめる人間はいないのよ」
 この家の母親は、あまりにも哀れなプー助の姿に涙しながら、優しい声で話しかけ、そして何度も何度もプー助の全身をなでた。
 ――中略――
「絶対に直してあげる。虐待された八年間を忘れてしまうくらい、幸せにする」
 こうしてプー助はこの家族全員の、深くて優しい、そして温かい心と愛情に包まれて、少しずつではあるが痛めつけられた心を癒していったのだ。

篠原淳美『こころを救う犬たち』(幻冬舎)、183~185ページ

 

最初のほうでも引用させていただいた通り、人間のあまりにも勝手な都合で捨てられたり虐待される犬たちが、本当にかなしいことですが後を絶ちません・・・。

 

言うことを聞かないから。バカだから。イタズラばかりするから。食いしん坊だから。うんちをするから。病気になったから。お金がかかるから。

 

・・・だから、捨てていい理由になるんですか?
人間だって、いろんな人がいますよね?だからといって、川に捨てたりしますか?「この人の面倒もう見れなくなったから殺処分してください」なんて頼みますか?しませんよね?
犬も、同じ「いのち」のはずですよね?それとも、犬なら川に捨ててもいいんですか?殺処分されても、犬なら仕方ないんですか?

 

犬が与えてくれる心のやすらぎ、不思議な力。あたたかなエピソードの裏に、 思わず目を覆いたくなるような過去をもった犬たちが、本書にはたくさん出てきます。
人間からとてつもなくひどいことをされたのに、それでも人間に寄り添い、心を開こうとしてくれる――。

 

そんな犬たちのやさしさに、私の頬をつたう涙はとどまることを知りませんでした。