行雲流水 〜お気に召すまま〜

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読書感想:「オリヴィエ少年の物語」シリーズ

ロベール・サバティエの「オリヴィエ少年の物語」3部作を読み終わりました。

 

『ラバ通りの人びと』(福音館書店
『三つのミント・キャンディー』(福音館書店
『ソーグのひと夏』(福音館書店

 

作者について

1923年、パリに生まれる。幼くして両親を失い、労働のかたわら勉学に励む青春期を送った。第二次大戦中は対独レジスタンスに参加。戦後、文学者として出発し、多くの詩集と小説のほか9巻に及ぶ『フランス詩史』、『死の辞典』などを著している。アカデミー・ゴンクール会員。パリ在住。

引用元:『ソーグのひと夏』(福音館書店)より

 

内容紹介

1作目『ラバ通りの人びと』では、オリヴィエ少年が母を亡くしたところから話がスタートします。

 

父を早くに亡くし、オリヴィエは小間物屋を営む母と二人、ラバ通りで幸せに暮らしていました。
そんなある日のこと、母が急死し、彼はみなしごになってしまいます。

 

近所に住む母のいとこ夫妻・ジャンとエロディーの部屋に預けられることになったオリヴィエ。
夫妻はオリヴィエにとても親切にしてくれましたが、若すぎる二人であるがゆえに、このままオリヴィエを手元に置いておくことに対する不安も抱いていました。

 

そうとは知らずにオリヴィエはラバ通りで様々な大人たちや仲間たちとの触れ合いを通し、活気あふれる下町の暮らしの中で、オリヴィエの心は少しずつ癒やされていくのでした。

 

やがて、裕福な伯父夫婦に正式に引き取られることになったオリヴィエ。
しかし、それはあまりにも突然にジャンの口から告げられ、オリヴィエは何の心の準備もできないまま伯父の車に乗せられ、ラバ通りを離れるところで1作目は終わります。

 

2作目『三つのミント・キャンディー』では、伯父宅で目を覚ますシーンからスタートします。

 

伯父アンリはとても裕福だけど無口でつかみどころがなく、伯母ヴィクトリアはどこか冷たく厳格で近寄りがたい雰囲気がありました。
そして従兄マルソーや、その弟ジャミ、伯父宅に住み込みで働く二人の女中。

 

新たな人間関係にはじめは戸惑いつつも、オリヴィエは自分なりのやり方で伯父一家と向き合っていきます。
そうするうちに、やがて伯父夫婦の本当のやさしさを知るようになるのでした。

 

一方で、従兄マルソーから絶対に口外するなと約束させられた秘密に対し、その重さに耐えかねてオリヴィエは信頼する女中の一人に秘密を漏らしてしまいました。
これを知ったマルソーから激しい怒りの感情をぶつけられ、オリヴィエはある悲しい決心をします。

 

しかし、この出来事があったことで、かえって伯父一家との絆は深まりました。
マルソー、ジャミ、そしてオリヴィエ――3人の息子たちのためにアンリ伯父がミント・キャンディーを購入するところで2作目は終わります。

 

3作目『ソーグのひと夏』では、夏のバカンスを利用して両親の故郷であるソーグ村を訪れます。そこにはオリヴィエの祖父母が住んでいるのでした。

 

パリとは違う田舎での暮らし――ここには豊かな大自然があり、昔ながらの生活を守りながらも逞しく生きる素朴な人びととの出会いがありました。そして淡い恋心も経験しました。

 

同時に、両親についての秘密を明かされ、押し潰されそうな悲しみを味わうことにもなりました。

 

しかし、ここでの暮らしは確かにオリヴィエの心を癒し、また必ず戻ってくると約束して、オリヴィエはパリに戻っていきました。ここで物語は終了します。

 

感想

全編を通して、オリヴィエが身を寄せた先の人びとがことごとく良い人たちだったというところがまずすごく安心しました。

 

1作目でも2作目でも、意地悪な家主、その子どもたちからの嫌がらせに耐える地獄のような日々・・・みたいな、よくありがちな展開を勝手に想像していたんです(笑)
この作品はそんな私の想像を見事に裏切ってくれて、あぁオリヴィエ良い人たちに恵まれて良かったねぇと心からほっとしました。

 

2作目でオリヴィエが手探りながらも伯父一家との信頼関係を徐々に築いていく様子は、かなり丁寧に描かれていると思います。
ヴィクトリア伯母については一見すると冷たい人のように思えますが、厳格さの中にもやさしさがあります。
彼女が厳格な態度を取るのにはきちんとした理由があり、それが語られたときには「なるほどなぁ」と納得でした。

 

3作目のソーグでの暮らしについては、ザ・田舎といったイメージそのままの素朴な生活風景が描かれています。
牛の出産の瞬間に立ち会ってオロオロしたり、ヒルに吸い付かれてオリヴィエが騒いでいるのに周囲の女性たちはまるで動じなかったり、いかにも都会から田舎に来た少年という感じが伝わってきてとても面白かったです。

 

あと、オリヴィエ少年はとにかく読書が大好きで、これには非常に好感が持てました。
本の世界に没頭するオリヴィエの姿が、自分と少し重なって見えたからかもしれません。
彼が読書にのめり込むようになった理由についてもきちんと物語の中で触れられています。
様々な文学作品も実名で登場するので、こういった作中の作品を読むのも今後楽しみです。

 

1冊あたり400ページ超えでおまけに3部作ということで、児童文学というにはかなりボリューミーな気がしています。
加えて図書館への返却期限が今日までだったので、読みきれるかどうか不安でした。

 

が、それは無用な心配だったようで、一度読み始めたらもうそのままラストまで一気に読み進められました。

 

感動するというよりも、オリヴィエの人間的成長を近くで見守っているような感覚ですかね。