行雲流水 〜お気に召すまま〜

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読書感想:『マンハッタン花物語』

マイケル・ゴールデンバーグの『マンハッタン花物語』(徳間書店)を読み終わりました。

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作者について

1965年アメリカ生まれの映画監督および脚本家。1996年、映画『マンハッタン花物語』で監督・脚本デビュー。他、2007年の映画『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』で脚本を務める。

 

内容紹介(ネタバレあり)

リサ・ウォーカーは、投資銀行で重役を務める30歳の女性。
彼女にとって仕事は何よりも一途に打ち込めるものであり、彼女の人生にとって「愛」が占める割合は1パーセント程度のものでした。

 

仕事に明け暮れるそんな彼女の前に、ある日突然、花屋を営む青年ルイス・ファレルが現れます。

 

まるで魔法にかけられたかのように、急速に惹かれ合っていく二人。

 

幸福であるはずの日々――しかし、ほどなくしてリサはルイスに対して心を閉ざすようになります。
実はリサは過去の生い立ちが人生に暗い影を落としており、いつかその話をルイスにしなければならないと思いつつも、なかなか過去と向き合うことができずにいたのでした。

 

クリスマスが近づき、クリスマスは両親に会ってほしいというルイスに、ただ頷くことしかできないリサ。

 

親友からも、ルイスに過去を早く打ち明けるべきだと言われてしまいます。
リサにも、それはわかりすぎるくらいわかっていました――わかっているからこそ、親友からのその言葉に腹を立ててしまったリサは、心にもない言葉で親友を傷つけてしまいます。

 

出発前夜、会社の仕事をわざと自宅に持ち込んできたリサは、急なトラブル発生でどうしても明日は行けないとルイスに伝えます。

 

それが嘘であることを見破ったルイスがリサに問い詰め、リサはついにすべてをルイスに話します。

 

迎えたクリスマス――家族の目の前でプロポーズするルイスにリサはどうしてよいかわからず、咄嗟に家を飛び出してしまいました。

 

なぜそんな態度をとるのかと問い詰めるルイスに、リサはルイスとは住む世界が違うことを告げます。

 

ルイスのように家族からの優しい愛情に包まれて育ってきた人間と身寄りのない自分とでは絶対にうまくいくわけがない、愛したくても愛されたくても自分にはその方法がわからないのだ、と――。

 

自宅に帰りたがっているリサに、ルイスはいったん家に引き返しました。
戻ってみると、そこにリサの姿はありませんでした・・・。

 

その後、リサとルイスは連絡を取り合うことなく日々は過ぎていきます。

 

リサにとってルイスは初めて「人を大切にしたい、愛したい」と思えた人でした。
しかし、ルイスの優しさや彼の家族の温かさは、家族の愛を知らないリサにとっては重すぎるのでした。

 

リサは自分の心の中に巣くう過去と向き合うため、かつて養父母とともに住んでいた土地へと向かいます。
養父母との出来事を思い返しながら、リサはようやく気が付いたのでした。

 

自分が傷つきたくないがために自分の殻に閉じこもり、結果として様々な人を傷つけてしまっていたことを。
そして自分が心からルイスを愛していることを。

 

リサは意を決してルイスの部屋を訪ねます。
二人の愛は、ついにハッピー・エンドを迎えるのでした。

 

感想

本作は、1996年に公開された映画『マンハッタン花物語』の原作です(なのでカテゴリは「映画」にしました)

 

私自身はこの映画は観たことがありませんが、本を開いて最初の数ページに映画のワンシーンを切り取った写真が載っていて、きっとすごく美しい映画なんだろうなぁと想像できました。

 

探してみたら予告編を見つけたので、載っけてみます。
日本語字幕は無いので、雰囲気を感じてください(笑)


Bed of Roses (1996) Trailer - YouTube

 

リサは、恋愛に対してかなり臆病な人物です。

 

ルイスの愛を受け入れることを頑なに拒否する原因は、彼女の過去にありました。

 

しかし彼女は愛するルイスのために過去と向き合い、自分を苦しめていると思い続けていた人物の本当の姿を知ったとき、ようやく過去から解き放たれます。

 

そんなリサの姿は、とても感動的でした。

 

――人に言えないような過去は、人間なら誰しもが持っているものだと思います。

 

過去と向き合うことはものすごく勇気のいることだし、逃げ出したくなる気持ちもわかります。
せっかく好きな人ができてもわざと嫌われるようなことを言ってしまったり、本当は思ってもないようなことを言って相手を傷つけたり・・・。

 

リサもまた、自分が傷つきたくなくて自分を守り続けた結果、たくさんの人を傷つけてしまいます。

 

こうした彼女の言動は、少し前までの私自身とも重なる部分が多かったです。
まるで自分自身をそこに見ているみたいで、リサに対してイライラしてしまうこともありました・・・。

 

でも彼女が自分の意志で過去と向き合い、それを乗り越えたときには、私も心から彼女を祝福できました。

 

愛する人のために過去の自分を乗り越える――その健気さに、私はこの物語に「人間の生きる力」の強さを教えられました。

 

ちなみに、ルイスもまた過去に傷を持っている青年です。

 

リサを愛するあまり彼女に対して気持ちが一方的になりすぎているように感じる場面もあるものの、彼は彼なりに過去と向き合って折り合いをつけているところは、リサよりかはずっと大人な人だなぁと思います。

 

二人がきちんとハッピー・エンドを迎えられて良かったです(^^)