行雲流水 〜お気に召すまま〜

好きなことを好きなように好きなときに書くブログです。

読書感想:『人生最後のご馳走 淀川キリスト教病院のリクエスト食』

青山ゆみこの『人生最後のご馳走 淀川キリスト教病院のリクエスト食』(幻冬舎)を読み終わりました。

 

f:id:akizuki-haruka:20210822151912j:plain

 

作者について

編集者、ライター。神戸市在住。単行本の編集・構成・執筆、インタビューなどを中心に活動。市井の人から、芸人や研究者、作家など幅広い層で千人超の言葉に耳を傾けてきた。

引用元:青山ゆみこ『人生最後のご馳走 淀川キリスト教病院のリクエスト食』(幻冬舎

 

内容紹介

人生最後の食事に好きなものを食べていいと言われたら、あなたは何をリクエストしますか。

 

本書は、淀川キリスト教病院の取り組みである「リクエスト食」にスポットを当て、入院中の14人のがん患者と患者を支える家族、医師、スタッフの想いを一冊の本にまとめた作品です。

 

淀川キリスト教病院(以下、ホスピスと記述)では、金曜日の昼下がりになると管理栄養士による「リクエスト食」の聞き取りが各病室で行われます。

 

患者本人が「食べたい」と思うものなんでも良い、まさに文字通り「リクエスト」できるのです。

 

食事量や好み、その食事にまつわるエピソードなども管理栄養士が細かくヒアリングし、各患者の要望にできるだけ添ったものを出せるようにしています。

 

食事を出す際の器や盛り付けにもこだわりがあり、できる限り市販品のものは使わずに手作りするというところに、患者一人ひとりを大切にしようという病院そして厨房の想いが込められています。

 

天ぷら、お鮨、秋刀魚の塩焼き、ポタージュスープ、お好み焼き・・・リクエストされる食事は、実に多彩です。

 

そして食事にまつわる思い出や「食」に対する意識も、一人ひとり違っています。

 

しかし、リクエスト食が出されたからといって、全員が食べられる状態にあるわけではありません。

 

ホスピスに入院しているのは、末期のがん患者のみなさんです。

 

ヒアリングした時点ではお元気だったのに、その後容態が急変し、翌日には昏睡状態になってしまった・・・ということもあるのです。

 

今日食べられても、明日は食べられないかもしれない・・・でも、「食べたい」という患者の想いは大切にしたい――。

 

ホスピスで行われているケアは、こうした「私はあなたを大切に想っています」というメッセージを伝えるための表現方法であると本書の中で触れられていました。

 

食べること、生きること。

 

実際に食べられなくても、「心で食事をする」こと。

 

14人のがん患者のみなさんの「食」への想いが、この本には詰まっていました。

 

感想

私がこの本を読んだのはちょうど自分が体調を崩していたときで、思うように食事が摂れていない時期でした。

 

そのタイミングということもあってか、本書で紹介されている患者さんの一つ一つの言葉が心に響き、涙が止まりませんでした。

 

本書では、以前は食べることが大好きだった、食べ歩きが趣味だったという患者さんがたくさん出てきます。

 

病気になり、入院した病院では思うように食事が摂れず体力も衰え、そのことによってなんだかスタッフから責められているように感じてしまい、さらに食欲が落ちる・・・。

 

食べたい気持ちはあるのに食べられないことで罪悪感を感じ、いっそのこともうこのまま死にたいとまで思い詰めてしまった折りにホスピスに転院することになり、「リクエスト食」の取り組みによって食べる楽しみ、生きる楽しみを取り戻した、という方が多くいらっしゃるのが印象的でした。

 

私が驚いたのはリクエスト食の多彩さ、そしてインタビューを受けている患者のみなさんがとても生き生きして受け答えされていることです。

 

みなさんが口を揃えて、「ここの食事はおいしい!」、「食べることはこんなにも楽しいんだってことを思い出した!」とおっしゃっているのにも感動しました。

 

それほど、「食べること」と「生きること」は直結しているんですね。

 

そして、心を込めて作られた食事がこんなにも人を元気にするんだということを、本書を通して教えてもらいました。

 

自分が食べたいと思うものを食べられる。

 

それが、どんなに幸せなことか・・・。

 

私自身、思うように食べられなかった一週間はものすごく辛かったです。

 

本書で紹介されているような患者のみなさんとは比べるのもおこがましいけれども・・・でも自分が思うように食事を摂れないことって、本当に想像を絶するくらい辛いです。

 

食べられないことで気持ちもさらに落ち込み、もうこのまま一生まともに食べられないんじゃないかとさえ一瞬思いました。

 

でも少しずつ食欲が戻り、自分が食べたい物をようやく食べられたとき、どんなに幸せを感じたか・・・とても言葉にはできません。

 

思い返せば、家族と初めて行った外食レストランや記念日のディナー、友人との食事――思い出の1ページには必ず「食事」に関するエピソードもあって、やはり食事というのは人生にとって欠かせないものなんですね。

 

一回一回の食事を大切にしていこうと思います。

 

人生最後の食事に好きなものを食べていいと言われたら、あなたは何をリクエストしますか。