中国と私④
中国の話はこのブログを通して何度か語ってきたものの、過去のを読み返してみても正直あまり自分で納得がいっていません。
日本で報道される中国はどちらかというとマイナスな印象を与えてしまうことが多いのですが、メディアで報じられているだけが中国のすべてではないし、現地の人たちは本当にみんなあったかくて優しくて・・・そういうことを伝えたいはずなのに、いざ書こうとするとなぜかうまく書けなくて、ただ事実の羅列みたいになってしまいました。
・・・・・・自分の文章がいかに稚拙かを思い知らされます。
なので今日は私が直に接した中国人との出来事について、思い出せるままに語ろうと思います。
機内にて
時は2005年、私にとって初めての訪中――成田から中国に向かう飛行機内で隣に座った中国人男性との一コマです。
その方は見たところ40~50代あたりと思われるおじさんでした。
3列ある座席の窓際に一緒に訪中する先輩、真ん中が私、通路側に男性が座っていました。
私は人生初の中国ということで終始テンションMAXになっており、先輩を巻き込んでひたすらどうでもいいことばかりしゃべっていたように思います。
そんな中で、いつしかそのおじさんも交えて中国語での会話が始まっていました。
正直なところ詳しい会話の内容はほとんど覚えていないのですが、たぶん私がいかに中国を好きかとか、訪中の目的とか、そんな感じの話を延々としていたんだと思います。
私の中国語能力ではおじさんの話す中国語はほとんどわからなかったはずだけれど、それでも別れ際におじさんが言ってくれた言葉だけはしっかり理解できたし、今でも私の記憶に焼き付いています。
おじさんは、最後にこう言ったのでした。
「中日友好はとても大切なことです。中国と日本は手を取り合っていかなければならないのです、未来のために。こうして日本人が中国に来てくれることがとても嬉しい。ありがとう、ありがとう。」
年齢を考えると、おそらく日本に対する複雑な感情をもった世代の男性です。
隣に日本人が座って、しかもそいつは終始ハイテンションでうるさくて・・・本当は迷惑していたかもしれません。
でもその方は嫌な顔ひとつせず、それどころか先輩や私のたどたどしい中国語にも真剣に耳を傾けてくれ、日中友好が大切だとまで言ってくれた・・・。
初めて生身の中国人と会話をして、とても一言では言い表せない気持ちになったのを覚えています。私の初訪中の第一歩を飾るにふさわしい、感動の出来事でした。
お茶屋さんにて
2011年に一人旅で北京を訪れたとき、王府井のお茶屋さんに立ち寄りました。
そこで出会った私と同年代くらいの女性店員さんと仲良くなり、お茶を試飲させてもらいながらいろいろと話をしました。
私が日本人だと言うと彼女は目を輝かせて「はるばる日本からようこそ」と、これでもかと言わんばかりにお茶をご馳走してくれました。
日本のアニメや漫画は本当にすごいというようなことを言ってくれて、日本や日本人に対して好意をもってくれていることがとても嬉しかったです。
その日知り合ったばかりの他人どうしなのに、同年代ということもあってかその後もコイバナで盛り上がったりなんかして、ガールズトークがめっちゃ楽しかったです(笑)
困ったときの話
中国人が本当はとても優しくて、あったかい人たちなんだということを実感した出来事がありました。
留学中のある日のこと、たまには観光地にでも出かけてみようとバスに乗ろうとしたのですが、とにかく路線が複雑なのと、常にひと・ひと・ひとでバス乗り場がぐちゃぐちゃになっていたのとで、自分が乗りたいバスになかなか乗れずに途方に暮れていました。
そのとき、一人の中国人のおじさんが話しかけてきました。
そのおじさんの中国語はとにかく早口だし巻き舌だし(北京の方言)全然何言ってるかわからなくて、おまけにめちゃくちゃ仏頂面で声もデカくて、私は最初おじさんに何か怒られているのかなと思い込んでいました。
ワケがわからないながらもとりあえず行きたい場所を告げると、「これに乗ればアンタの行きたいとこまで行けるから」というような言葉と、バスの番号が聞き取れました。
おじさんはバス乗り場であたふたしている私の姿を見かねて、助けようとしてくれていたのです。
それだけではなく、バスが来たときに運転手さんに行き先まで告げてくれたのでした。
おじさんにお礼を言おうとして振り向いたけど、やっぱりおじさんは仏頂面で、静かに頷いて去っていきました。
もう一つ、実際に経験したこと。
留学を終えるにあたり、寮を出てから出国までの間、北京で働いている先輩の家にしばらく泊まらせてもらうことになりました。
北京では至る所に地下道が設置されており、大きな道路を渡るときには地下道を利用します。
先輩の家に行くにはどうしてもこの地下道の階段を上り下りしなければならなかったのですが、エレベーターなど気の利いたものもなく、荷物を詰めすぎてどうにも動かないスーツケースを抱えて泣きそうになりながら階段で悪戦苦闘していたときです。
通りがかったサラリーマン風のお兄さんが声をかけてくれました。
お兄さんはスーツケースを階段下に下ろすだけではなく、通路を挟んだ階段の上まで運んでくれました。
その間、会話らしい会話はなかったのですが、私がお礼を言うとお兄さんはたった一言「不客气(どういたしまして)」とだけ言って、笑顔も見せずに足早に去って行きました。
――この出来事があったときに、私は思い出していました。
日本にいた頃いろんなところからさんざん聞かされた、「中国人には愛想がない」という話を。
話すときも大声で話すから、まるで怒っているように聞こえて怖い、と。
「確かに」と思う部分もあります。
でも、私はこのおじさんとお兄さんと接したことで、中国人という人たちに対する見方がガラッと変わりました。
無愛想に見えるかもしれないけれど、本当はすごく心の優しい人たちなんだということ。
日本人だからどうだとかそういうことは関係なしに、ただ純粋に困っている人には手を差し伸べる――そんな当たり前のことが、当たり前にできる人たちなんだと。
機内で出会ったおじさんも、北京のお茶屋さんで出会ったお姉さんも、そして困ったときに助けてくれたおじさんもお兄さんも、本当に人情味あふれる素敵な人たちばかりでした。
中には、心ない言葉をかけてくる人もいます。人間だもの、いろんな人がいることは事実です。
私の中国語を、ヘタクソだと鼻で嗤った中国人もいました。ヘタクソなのは事実だけど、バカにした態度を取られるとこちらだって腹も立ちます。
日本人と見るや、あからさまに高い金額をふっかけられたこともありました。
それでもマスコミが報道しているような、悪い面ばかりではないということは強調しておきます。
「国と国」として見るなら、確かにいろんな問題は山積みだし複雑な感情はすぐには消せるものではないかもしれません。
でも、「人と人」とで見るならば、こんなにもあったかくて素敵な人たちがいるんだということを、多くの方に知っていただけたらなと思います。
長くなりましたが、読んでいただきありがとうございました。
写真は2011年に撮影したものです、このお茶セットでいろいろ試飲させてもらいました。
撮影場所:北京市・王府井
こちらは北京大学構内の一角。大学の写真を載せていなかったので。2007年撮影。